課題の教科書

Critical Realism for All Leader

外交官の事例に学ぶ「攻めの交渉」に加えて開き直りの論理

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こんにちは。ポエタです。

最終的な問題解決が交渉次第になることがあります。

その場合、交渉担当者のプレッシャーは絶大です。

プレッシャーに負けない交渉姿勢は、攻めの姿勢です。

そして、もう一つ大事なことは、ある意味では開き直りかもしれません。

いずれも合理性をわきまえた、賢明な原理原則ではないでしょうか。

今回は外交官薮中三十二の事例を皮切りに考えます。

1 はじめに

仕事で交渉の場に出るのは、誰もが緊張するのではないでしょうか。自分側の主張を通したい。しかし、相手を怒らせたくはない。そんな葛藤の中で、場を壊さずに話をまとめ、なおかつ戻ったら自分の組織にもきちんと報告しなければなりません。

外交の現場では、国益の実現を競う国際政治の中で、厳しい交渉を強いられます。外交官の経験談は、交渉についての示唆に富んでいます。国際人として身につけるべき攻めの交渉姿勢を考えます。

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2 外交官薮中三十二の交渉事例

(1)人物

薮中は2008年から2010年まで外務省の事務次官を務めました。本人は、外務省では「怖い存在」で、部下を厳しく叱責することもあり、受け身の姿勢で何かと政治判断に委ねる仕事ぶりが許せなかった、と述べています(日経ビジネス2018年12月3日号、日経BP社、P.1)。薮中は、積極的な提案で交渉を前に進める姿勢を重視しました。

(2)攻めの交渉事例

北朝鮮の核問題を扱う第1回6カ国協議で、薮中は首席代表を務めました。この際、中国からは、拉致問題を出すと北朝鮮が交渉の席を立ってしまうから、控えてくれと言われました。しかし、拉致問題に触れないわけにはいかない。一方で、交渉の場を壊すわけにもいかない。

そこで、藪中は、「我々の目的は北朝鮮に核開発計画を放棄させること。それには北朝鮮の安全を保障することと経済協力が重要。日本は経済協力をする用意があるが、そのためには、拉致問題を解決し国交を正常化する必要がある」と述べました(同前、P.1)。

要するに、拉致問題を持ち出すと反発はあるかもしれない。しかし、双方の事情を勘案してもなお、拉致問題を議論する合理的な理由があるという筋を通しました。

その結果、北朝鮮の代表は反発したものの、ロシアの代表は理解を示しました。

(3)よりどころは合理性(ロジック)

薮中が重視したのはロジックに基づくオフェンスを通すことです。ただ単に強気の交渉をすればよいわけではありません。藪中は、利害関係者の信頼を常に得る必要があり、そのためにはやはり勉強だと述べています。

薮中は外交に限らず、国際人にとっても、ロジックに基づくオフェンスが必要だと強調します。

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3 攻めの交渉者の基本姿勢

薮中の事例を念頭に置きながら、国際人が交渉の場で必要とされる基本姿勢を考えました。

(1)堂々と主張する

交渉では、まず双方の主張の軸をはっきりさせる必要があります。最初から譲歩を期待するのは、本末転倒であり、交渉相手に対して失礼であるとも言えます。

自分たちの主張は、堂々と言わなければなりません。相手の顔色をうかがっても、主張しなければ交渉にはなりません。

しかしながら、気持ちで押しても交渉はまとまりません。ロジックで言わなければなりません。交渉の相手方も終わったら、上役に報告するでしょう。「ものすごい剣幕だったので条件を飲みました」とは、言えるはずがない。まともなロジックがあれば報告もまともになります。

とはいえ、相手の仕事上の都合への配慮だけでは交渉はまとまらないでしょう。しかし、ロジックが交渉の最低条件であるとは思います。

(2)相手の合理性への信頼を信じる

交渉のテーブルにつくということは、その瞬間から対話しなければなりません。対話の席についた瞬間、お互いイーブンに交渉の責任を負います。それは自分側も相手側も同じです。

交渉が始まれば、どちらも問われれば答えなければなりません。その際、対話を支えるのは、合理性への信頼でしょう。

人間が合理的な存在である以上、問われれば(何らか)答えなければなりません。相手にロジックが通じないと思った瞬間、交渉は成り立ちません。しかし、相手に合理性への信頼があるかどうかは、自分側が決めることではありません。それは相手次第です。

だから、自分側としては、相手側に合理性への信頼があると信じるほかない。合理性に徹した交渉を続けることが、交渉に臨む者の最低限の姿勢です。

(3)ねばり腰で意思を貫く

交渉が尽きた瞬間、破談します。それを自分側は望まないでしょう。しかし、同じく相手方も望まないでしょう。

交渉継続の条件は、交渉を合意に導く意思が双方ともにあるかどうかです。当たり前かもしれませんが、相手側の意思を自分側が決めることはできません。だから、自分側の意思が重要です。

相手側に交渉合意の意思があるかないか分からなければ、自分側に意思がある限りねばり強く交渉を続けるほかありません。交渉は開き直って頑張り続けるのが最強の姿勢だと思います。

交渉継続を自分側が先に諦めたら、破談の理由は、自分側にあったことにされるでしょう。自分側に意思がある限り、諦めてはいけないのです。その結果、相手側の意思がないことが明白になった時、交渉は幕をおろします。

 

4 最後に

(1)合意に向けた2つの問い

交渉に臨む際、自分に問うべきことは、次の2つでしょう。

  • この交渉で何を実現したいのか
  • この交渉で合意したいのか

この2つの問いは一般的には、二律背反です。交渉で実現したいことを強引に貫こうとすれば、合意は難しくなります。他方、交渉で合意したいのなら、実現したいことのうち、何かを譲歩する必要があるかもしれません。

この2つの問いに、両方完全に答えることが、すなわち合意の実現だと思います。合意の実現を決定づけるのは、上記で述べたような姿勢の問題ではありません。姿勢は交渉の過程を支えるものです。交渉の結果は知恵が左右すると思います。

どういう視野をとって、どこに焦点を定めるかによって、交渉材料の種類と数、そして重要度はガラリと変わるでしょう。単なるパワーゲームとは異なる交渉者の力量が問われる部分だと思います。

(2)まとめ

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  • 国際人の交渉に必要なのはロジックに基づくオフェンス
  • 交渉の過程は「堂々とした主張」「合理性への信頼」「強い意思」が支える
  • 交渉の結果は二律背反を解決する知恵が決定づける

<主要参考文献>

日経ビジネス」2018年12月3日号、日経BP

ポエタ

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