課題の教科書

Critical Realism for All Leader

監視社会の何が悪いのか実感がわかないから問題点を掘り下げ課題を3つ出した

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こんにちは。ポエタです。

監視社会化の流れに対して疑問の声が上がっています。しかし監視社会の何が問題なのかは日本で暮らしていても実感がわかない。

そこで監視社会の問題を論理的に整理しました。日本で監視社会に対する忌避感がどこか希薄なのは、日本には村社会的風土が残っているからかもしれません。

実践編として語ります。

目次です。 

1 はじめに

世の中が監視社会になっていると言われています。街角の随所に防犯カメラが設置され、スマホGPS機能が監視ツールとなる技術が普及しています。

しかし、監視のせいで特段問題を肌身に感じた人はそれほど多くないのではないでしょうか。実害にあった自覚のない人にとって、監視社会の何が問題なのかは、論理的な想像を働かせないと理解しづらい面があります。

今回の記事では、構造論的に監視社会の問題と課題を考えました。

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2 監視社会の問題の本質

(1)監視社会に関する一般論

情報技術の発展により、ジョージ・オーウェルが小説『一九八四年』で描いた監視社会が、まさに実現しそうな世の中になっています。しかし、安い監視ツールを使って業務を効率化できるなら、日本企業が監視技術に飛びつくのも、ある意味当然だという主張もあります。

監視技術は手段の問題であり、目的次第でよしあしは異なるのかもしれません。常に技術は人間に不安をもたらすが、使い方によっては利器になるという一般論です。

(2)様々な問題のとらえ方

監視社会が実現すると、息子が政治活動している母親が「お前の家族は全員見張っているぞ。家庭内のことを全部話せ」と当局に詰問されるかもしれません。そうなると、何をされるかわからない怖い話です。

ですが、ネットで買い物する際に「お前の購買履歴は全て把握している。全部その前提で買い物せよ。」と念押しされる場合と、本質的に何が違うのでしょうか?

ポエタが言いたいのは、政治問題の提起ではありませんし、日本のネットビジネスの負の側面でもありません。監視社会の問題の本質を考えたいだけです。一体監視社会は何が問題なのか。

(3)問題の判定方法

監視社会を問題だと感じる理由は主に三つありそうです。

①情報の取得主体 ✖️  ②通知の仕方 ✖️  ③利用目的 = 問題の悪質性

三つについて考えます。

①情報の取得主体

監視社会が怖いのは、住民の個人情報をつぶさに取得しているのが国家だからです。なぜ怖いかと言うと、国家には強制力があるからです。純粋な民間企業が、ビジネスの一環で個人の情報を取得することまで怖いとはあまり思いません。

米国では、犯罪データを元に犯罪予測システムを導入する動きが進んでいるそうです。しかし、日本で犯罪データを民間の開発に委ねる警察はほとんどないそうです。

推測ですが、治安という目的とはいえ、日本では、国家が取得した情報を監視に用いることに対する市民の抵抗感に対し、配慮が働いているのかもしれません。

②通知の仕方

もし国家から私的な情報を把握されたとしても、それを全く知らなければ、怖いとは思いません。もちろん、情報の取得という事実自体が問題になりえるわけですが、先ほどの母親のような怖い言い方をされなかったらどうでしょうか。

感じのいいお姉さんに「あなたの身の回りを健全にするために、お調べしていますからね〜♫」と言われたら、案外笑顔で聞き流してしまいそうです。相手を怖がらせず、情報取得の事実をちゃんと通知しているわけです。どこに問題の本質があるのかわからなくなります。

それもある意味相当怖いのですが、ポエタが言いたいのは、通知の仕方次第で問題の受け取り方が随分異なるという点です。

③利用目的

目的次第で問題か否かは異なります。しかし、確かにそうなんですが、その目的からいくらでも正当化できてしまうわけです。先ほどの監視国家の例え話でも、「地域の治安向上のため」と言えば、ある意味その通りなのかもしれません。

④目的と手段の合理的関係

こうして考えると、最初に挙げた①から③の理由だけだと、議論をすり抜けた問題が正当化されてしまうリスクがあります。

結局、その目的に照らして、手段が正当な範囲に収まるのかどうか、という実質を問う必要があります。目的だけを議論すると、形式論で終わってしまいますから。

目的と手段の合理的関係が成立しているか否か、これが問題の成立を見極めるための考え方のようです。

 

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3 監視技術の適正利用のための課題

(1)社会的合意

情報技術がここまで進歩する以前から、個人情報は必ず誰かに把握されています。地元の商店で買い物して現金で支払うだけで、店主は、あなたの購買履歴をある意味平然と取得しているわけです。

それが監視社会の問題として取り上げられないのは、なぜでしょうか。情報の分析や共有あるいは拡散の技術が発達していないからでしょうか。いえ、技術がなくてもいくらでも噂話のネタにすることはできます。前近代的な村社会は、ある意味ではかなり進んだ監視社会です。しかし、それが社会問題にはならなかった。

村社会的な情報取得が問題にならないのは、社会的合意があるからだと思います。「そんなの誰も気にしてないよ」と誰もが言うでしょうから。

ではなぜ、社会的合意があるのでしょうか。それは、これまで、商店が個人の購買履歴を利用して顧客に損害を与えたという問題意識が、その地域社会にほとんど存在しないからだと思います。

(2)相互監視の仕組みの構築

しかし、その商店の店主も、うっかり噂話している可能性はあります。「この間あの有名人が店でどんな買い物をしたんだよ」とかお客さんに世間話として言っているかもしれません。ですが、仮に言っていたとしても、それほど問題とは思われないでしょう。

どういうわけか、情報がデジタルになると、急に問題が大きくなるわけです。人間同士の会話でアナログな情報をやりとりすることに、違和感があまりないのはどうしてでしょう。

それは監視者を監視する仕組みの有無ではないでしょうか。会話で噂話している人は、相手からその実態を話しの中で監視されます。また、噂話をしたという事実も、別人による監視の対象になり得ます。村社会には相互監視が成り立っています。

しかし、国家が監視する場合、その国家を監視する仕組みがないと、国家が取得した情報は途端に物騒の種になるわけです。

また、一般企業も、個人情報の取得・活用の実態を、実際どれほど有効に第三者が監視しているかはよくわかりません。そうなると「自分の個人情報はちゃんと守られているのか」と心配になるわけです。

地域、経済、国家の各レベルで相互監視の仕組みを構築することが、適正な監視社会の課題ではないでしょうか。

(3)実質要件の議論の積み重ね

少し前に、目的に照らして、手段が合理的かどうかが大事だと言いました。しかし、その判定の基準は結構複雑で難解だと思います。しかし、この実質要件に関する社会的合意を得ることが、監視技術の適正利用のためには不可欠な課題ではないでしょうか。

そのためには、実質要件に関する議論をいちいち積み重ねる必要があります。技術の方が先に進歩しているのが現状です。議論が追いついていません。しかし、だからこそ現状出ている問題を議論の俎上に乗せて、本質的な議論をする時機なのではないでしょうか。

 

4 最後に

(1)情報をとる方も情報はとられている

何かを調べる目的で検索エンジンで検索するだけで、検索したという事実は情報としてすでにどこかに収集されています。ある意味では、相互監視はどこかのレベルでは成立している可能性があります。しかし、それが適正な監視社会に役立つレベルに達しているかは別問題です。

全ての情報がとられているということは、情報をとる行為すら事実情報として流通することを意味します。その認識こそが情報を取得しようとする者へのけん制になるのではないか。そのためには、実態としてすでに部分的に成立している相互監視の実情を、誰かが明確に把握し、それを正しく社会に伝える必要があるのかもしれません。

監視社会のあり方について社会的合意を得るためには、まずすでに部分的に成立している相互監視のあり方を明るみに出すことが第一ではないか。最後にそういう示唆だけ述べておきます。

(2)まとめ

  • 監視社会の適正化には社会的合意が必要
  • 相互監視が適正化の課題
  • 議論にあたって相互監視の実態を共有すべき

<主要参考文献>

日経ビジネス」(2018.11.12 No.1966)日経BP

ポエタ

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