課題の教科書

Critical Realism for All Leader

堅実な株式投資でまず先に決めなければならないことを考えた

こんにちは。ポエタです。

今回は実践編です。

目次です。 

1 はじめに

株式投資は資産運用の一手法です。そして、その人の置かれた状況によって資産運用の目的はちがいます。

例えば、次のような3つの人物像を考えてみました。

(1)100億の金融資産がある高齢者

(2)老後の生活設計が立ち、余剰資金500万円が確定した50歳の会社員

(3)100万円の預金だけをもつ社会人3年目

(1)の人は、莫大な資産を持っています。この人は、考えようによっては、資産が底を突かなければそれでよい、と言えなくもない。預金、株式、外貨、実物等の枠で、ポートフォリオを組めば、リスク分散できるので、一文無しになるリスクは低いと思われます。仮に、持っている資産の価格変動で、100億円の99%を失っても、1億円残っていれば生きてはいける。「いや私はもっと増やしたい」というなら、話は別ですが。

(2)の人は、500万円は余剰資金だから、最悪500万円を全部失っても生活は守れる。500万円の枠内で、積極的にリスクをとってもよいし、堅実にリスク分散しながら、長期で儲けてもよい。

(3)の人は、100万円を株に突っ込んで、仮に全部パーになったら、臨時で生活資金が必要になった時に困窮してしまうかもしれない。この人は、仕事から得られる所得の見通しも含めた、生活設計がまず必要ではないか。

今回の記事では、(2)の人を取り上げて、長期で堅実な株式投資に取り組む上で、まず先に決めるべきことを、考えてみたいと思います。

 

2 Aさんの堅実な株式投資について考えてみる

上記1(2)の人を、仮にAさんとします。Aさんは、株式投資以外にも、社債、外貨、実物等、運用候補は、幅広いはずです。しかし、今回の記事は、株式投資に絞って批評してみたいと思います。

なぜなら、堅実な株式投資の場合に絞って考えてみると、先決事項の重要性が際立ってきて、一般論としてのリスクマネジメントの留意点を考える上で、参考になる点が多いからです。

では考え始めます。

Aさんは、50歳です。老後を迎える65才までの15年を投資期間としました。長期でリスクを抑える方針です。

Aさんは、どの企業の株に投資するか考え、銘柄選定の論点を考えてみました。

(1)将来配当が出るか

(2)将来配当がどれだけ出るか

(3)買う時の株価がどの水準か

(4)その他

論点を一つひとつ見ていきます。

(1)将来配当が出るか

株式投資の儲け方は、大きく2つあります。

  • 保有期間中の株の配当で儲ける
  • 株を買って売った時の株価の差益で儲ける

Aさんは、長期保有が方針なので、配当の果実を狙うことができます。また、15年後を目安に売った時の差益も狙えます。

通常、株の値動きは、長く持つと、数%のみならず数十%以上変動することもあります。一方で、年ごとの配当は持っている株の値段の数%しか出ないのが普通です。ですので、配当より売買差益の方がてっとりばやく儲かる、と考えられやすいです。

しかし、企業は利益をだし、株主に配当で報いるのが普通です。ですから、配当がまったく出ない企業は、あまり普通の企業とは言えない。将来配当が出るか出ないかは、銘柄選定上、重要なポイントです。

(2)将来配当がどれだけ出るか

先ほど、株の儲け方には二つあると言いました。そのうち、売買差益の方が儲けやすいと言いましたが、配当も実は馬鹿になりません。仮に、配当が15年間毎期、出続けたらどうでしょうか。

買った時の株価の2%が、配当として出続けたと仮定すると、

2%/年×15年=30%

配当だけで、買った時の株価の30%分の累計収入になります。

単純計算ですが、15年後に株価が30%ダウンしたまま売却したとしても、トータルでは収支トントンの結果になります。つまり、将来の配当(の想定)は、株価変動のリスクバッファとして考えることができます。

配当を株価変動のリスクバッファと考えた場合、将来、買った時の株価に対して何%の配当が出る、と想定するかは、銘柄選定上、重要な論点です。

配当は普通、毎年の利益の中から出ます。

  • 将来投資期間中に利益を出し続けるか
  • 利益からどの程度の配当を出す政策をとるか

配当がどれだけ出るかを検討する上では、この2つについて、候補銘柄の動向をよく抑える必要があります。

(3)買う時の株価がどの水準か

先程、配当は、株価変動のリスクバッファになり得ると言いました。その時の計算式は、

株価変動のリスクバッファ=想定配当利回り(%)×保有年数

でした。保有年数は15年間で固定するとしておくと、想定配当利回り(%)はどう決まるでしょうか。

想定配当利回り(%)=想定配当額(平均)➗買った時の株価

先ほどの話では、想定配当利回りが高い方が、リスクバッファが高くなりましたね。計算式からすると、想定配当利回りをあげるには、想定配当額が上がるか、買った時の株価が低くなる必要があります。

想定する配当の水準が重要だという話は既に(2)でしました。ここでの注目点は、買った時の株価をいかに低くするかです。

買う銘柄は、買う時点で割安銘柄であることが重要です。気をつけるべきなのは、単に安ければよいわけではない点です。株価が著しく低い企業は、破綻リスクが株価に織り込まれている可能性があるからです。堅実投資する上では、破綻リスクの高い銘柄は選ばない方が賢明でしょう。

例えば、収益の成長性のある企業で、株主に報いる配当政策をとる見込みがあるのに、株価が一時的に停滞している、そういう銘柄を見極める必要があると思われます。

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(4)その他

実質的な配当利回りの計算には注意が必要です。配当には税金の支払いが通常発生します。他にも、証券会社への手数料が発生する可能性などもあります。

また売却する時点の株価も重要な点ですね。ただし、このケースでは、15年後の売却を前提に置いているので、売却する時点の検討は割愛します。

3  Aさんの留意事項

(1)リスク評価には心理的側面がある

株式投資にはリスクはつきものです。よく「ハイリスク・ハイリターン」と言います。しかし、高いリスクを取れば必ず儲かるという意味ではありません。高いリスクをとると、値動きが大きな幅で増減しやすい。だから、大幅に増えた段階で売れば、大きく儲かる。しかし、大きく下落した段階で売れば、大損する可能性があるわけです。

リスクの取り方には、人によって心理的な特性が異なるようです。よくたとえ話として言われますが、墜落するリスクを怖がって飛行機に乗りたがらない人に、「自動車に乗って交通事故で死ぬリスクの方が高いよ」と言うと、「じゃあ飛行機に乗ろう」と意思をひるがえすケースがあります。しかし、人によっては、「自動車に乗るだけで十分リスクをとっているから、加えて飛行機事故のリスクはとりたくない」と反応する場合もあるでしょう。リスクのとり方は、何か論理的な正解があるわけではなく、その人の気持ちひとつだと思います。

株式投資にもリスクはつきものですから、判断は心理的な面に左右されがちです。単なるノリで判断して失敗した経験のある人は多いのではないでしょうか。何が判断のポイントなのかを、客観的に把握した上で判断するリスクマネジメントが必要です。

(2)投資判断は配当利回りの見込みで大きく左右される

配当の将来見込みがどれくらい高いかで、株価変動のリスクバッファになると言いました。高い配当利回りを想定すると、リスクバッファは大きくなりますから、投資実行の判断に傾きがちです。一方、配当利回りがあまり期待できない銘柄だと、リスクバッファは小さくなりますから、投資実行の心理的インセンティブは小さくなります。

要するに、配当利回りの水準をどの程度で想定するかで、投資判断が大きく左右されることになります。ここで安易に配当利回りを高く想定すると、論理的にはリスクバッファが大きくなり、見かけ上リスクが小さくなったと錯覚しそうになります。しかし、想定した配当利回りの水準が本当に妥当なのかどうかの客観的な検証がないままに、投資を実行すると、思わぬ結果になりかねません。気をつけるべき留意点だと思います。

(3)投資判断の論理的構造を客観的に把握しなければならない

このように、投資判断には、個人の心理的な特性がからみやすく、論理的なマジックで錯覚を起こしかねない、こわさがあります。ですから、自らの投資スタンスをはっきりさせた上で、投資銘柄の選定と投資実行の判断等において、何が決め手になるのかを、客観的な視点で把握する、リスクマネジメントの発想が大事だと思われます。

(4)リスク分散は必ず儲かるための保証ではない

リスク分散の狙いは、必ず儲かる保証を得ることではありません。リスク分散は投資手法の一種であり、リスクのない投資はないと言ってよいでしょう。リスク分散の狙いは、持っている資産の総額が、極端に変動しないようにすることです。

リスク分散の考え方としては大きく二つの視点があるようです。一つは、投資対象の分散。もう一つは、買うタイミングの分散です。(詳細説明は割愛)

 

4  最後に 

(1)大事な先決事項

何度も言いましたが、必ず儲かる株式投資手法はありません。株式投資は安易に踏み出すべきものではありません。

また、株式投資に踏み出すとしても、自分で、決めるべきことが何なのかを、心理的にではなく、客観的に明らかにする必要があります。はやりに乗ってはいけないし、他人任せでもいけない。

ポエタは考えます。堅実な株式投資に取り組む上で、決めるべきことを弁えたからと言って、必ず儲けるためのお守りができるわけではない。決めるべきことを弁えた上で判断すれば、仮に失敗した時にも、負けは負けと言う認識を正しくもち、ズルズル損を膨らませないで済む。その上で、論点は検討済みだから、失敗の原因分析のフレームはすでに明らかであり、原因を学習すれば、単に負けたことにはならない。

また、株式に投資する上で重要なことは、自分が責任をもってとり得る、リスクのバッファを決めておくことです。Aさんの場合、特に次の2つの方針を決めてから、個々の論点を検討する必要があると思います。

  • 将来の生活設計をした上で確定すべき余剰資金額
  • 余剰資金枠内で許容すべき最大リスクバッファ割合(%)

この方針が決まったら、後は具体的な銘柄候補について、上記の2(1)から(4)の論点について検討し、具体的な銘柄への株式投資が、最大リスクバッファ割合の方針に収まるかどうかの判断をすることになるでしょう。

ポイントは、方針を決めずに、いきなり2(1)から(4)の検討をしても、結論は出ない点です。なぜでしょうか。

主に上記2(2)と(3)で個々の銘柄候補について、想定利回りを出しますね。それである候補先のリスクバッファが25%だったとしますね。別の銘柄候補は20%。もう一つは30%だとします。3つの候補に均等な額を投資すれば、平均で25%のリスクバッファになります。それで、どう意思決定すればよいのでしょうか。「うーん、僕の感覚で言うとこのリスクバッファ低いなあ、高いのも入れようか」「いや十分高いとみて実行したらいいんじゃないか」「いや、それって、やることありきで勢いこんでないか?」とか際限なく逡巡することになりませんか?

まず先に全部失っても支障のない生活資金を設定した上で、余剰資金を確保し、余剰資金全体の最大リスクバッファ割合を決めておくことが重要です。それが先決事項です。でないと、各論点を検討しても、多分判断は迷走します。ですが、そこを決めておけば、個別具体的な銘柄の想定配当利回り(平均)が自動的に設定するリスクバッファ割合が、方針として決めた最大リスクバッファ割合の中に収まるかどうかで、結論を割り切って出せると思いませんか? 実質的な想定利回りを、根拠をもって設定することが、前提ですけどね。

(2)まとめ 

以上、ポエタの思考実験として、堅実な株式投資の判断事項を考えてみました。抜けていたり不十分な論点はあると思うので、自分で考える際の呼び水にでも使ってみてください。

今回、強調したかったのは、検討するにも先決事項がありますよ、という点です。今回は「課題の教科書」の実践編としての記事でした。ですが「課題」については触れていません。検討の論点と、その前に決めるべき先決事項を浮き彫りにすることを狙って書きました。

あえて一般的な課題論として言うと、「株式投資のような、ふわっとしたテーマだと、最初に(方針として)腹ぎめしないと、いくら検討しても投資する・しないの判断は出ないですよ、気をつけてくださいね」と言うのが、今回の主要なメッセージです。株式投資は、その話のネタにすぎません。

今回の記事で、堅実な株式投資に取り組むAさんに対する本質的な問いは、次の2つです。

  • 余剰資金枠はいくらですか?
  • 余剰資金の内、許容できる損失の幅(最大のリスクバッファ割合)はどこまでですか?

では、今回のまとめです。 

  • 株式投資は資産運用の一手段であり、取り組みのスタンスには色々あり得る。
  • 株式投資にはリスクがつきものだが、リスクマネジメントの発想がないまま、勢いで投資判断するのは避けた方がよい。
  • 長期の堅実投資に取り組む上では、実質的な配当利回りをどれくらい見込むかが投資判断を大きく左右すると思われる。
  • それ以前に、正しく設定した余剰資金枠の内、失ってもよいと考える最大リスクバッファ割合を何%にするのか、方針設定が先決事項である。
  • 株式投資に限らず、リスク状況を踏まえて検討する際には、先に何を決めなければ結論が出ないかを見極めるリアリズムが大事になる。

以上です。

 

ポエタ

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