課題の教科書

Critical Realism for All Leader

出版取次の苦境|読み手目線のマーケティングの高度化に期待

2018年8月14日の日経新聞の朝刊を読んだ。出版業界で、取次会社が、物流費の高騰に苦しみ、出版社に物流コストの追加負担を願い出たそうだ。この事実は、出版業界の構造的な問題に根ざしている、とその記事は報じている。

取次会社は、書店と出版社の間に入り、書店の代わりに在庫リスクを負う。書店は、取次会社が送ってきた本を、受け取って店頭に並べ、売れなければ出版社に返本する。書店からの代金回収は取次会社が代行するから、出版社は本を渡してしまえば、一定期間後に収益が出る。書店も出版社も取次会社に任せきりで、済んでしまう。その分、業界の主導権は、取次会社が握る。出版業界は、取次会社主導の成功モデルで、ずっとやってきた。その取次会社が、本の売れない時代に、コスト高にあえいでいるそうだ。

業界に詳しくないが、本を読むことを習慣にしている者としては、ちょっと考えてみたくなる問題である。読み手としては、読み手のニーズにあった本の出版を望む。しかし、あくまで門外漢の考える仮定だが、出版社と書店の間に取次会社が立ち、サプライチェーンの上流と下流との間の情報の行き来がうまくいかないとなれば、商品の売り方に問題が起こり得る。出版の企画を出版社が立てても、書店を通過しているであろう、あまたの購買者の貴重な情報を、企画に対して十分に反映できないなら、センスや想定に頼った中途半端な企画になりはしないか。

ある小説家のエッセイを読んだ。その小説家によると、作家は通常、どんな読者が自作の本を読んでいるかは、わからないそうだ。ジャンルに応じて、読者層の想定をするのが関の山のようである。例えば、恋愛小説なら、二十代、三十代の女性。時代小説なら、中高年の男性。そういう想定は、本当に事実であるかどうかが、あまり判然としない、業界の常識みたいなものであろう。

その小説家は、読者との交流を、インターネット関連の方法で補っているそうだ。積極的に、直接読者とメールでコミュニケーションをとることで、創作の源を見つけているようである。作り手と買い手のコミュニケーションは、マーケティングの基本であり、創作の大敵である権威主義の防波堤ともなるものだ。 

おそらく、今後、出版業界は、未曾有の変革期を迎えるであろう。電子書籍の普及、働き手の不足、販売手段の多様化。各社は、業界あるいは自社が成り立つ条件探しに、必死になっているようだ。既に取り組みが始まっている。しかし、何事も、真に合理的な者のみが生き残る。創作の合理とは何か。この機会に、創作家の生き生きとした発露が増すことを願ってやまない。

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