課題の教科書

Critical Realism for All Leader

詩情についての考察|すべての精神活動の源|問い・世界・思考

世界への問い。一つひとつ問いを挙げてみようか。そんなことを言いたいのではない。問いは口元に溢れ、思考は窒息する。世界は喉元から絞り出される。世界が生み出されるため、思考は横死しなければならない。

問いの発出と世界の開示は、電光石火の同発現象だ。悠長な思考の電線は、とっくの昔に寸断されている。問いが世界を現す。問いが世界を引きずり出す。世界が正体を現した時、横死した思考の上で、詩情が満ち満ちる。

詩情はすべての始源である。芸術、哲学、科学、その他の学問は、すべて詩情の翻訳である。人間の精神活動は、どれもこれもが詩情に動機の端を発する。詩情の素性など誰も知らない。知らずに語り始める何かがいる。正体の知れた者は、語ることの持ち合わせなど一つもない。謎はいつも自ずと語るものだ。 

問う刹那、世界はたちどころに自明となる。わからないなら、わかっているではないか。無知の知を唱えた哲学者は、あり余る詩情の音を聞いていた。わからないから問う。問うならば、問いの狙いには照準がある。ならば既に何かをわかっている。この矛盾に成り立つ微分にひそめく知の断面は美しい詩情を奏で始める。 

哲学は詩情の別表現だ。哲学は対話を求める。言葉は関係を求める。言葉によって輪郭をなすのは、他者の姿だ。言葉の意味は、生存者の本能が感知する。生きることとの位置関係で言葉の意味が出来上がる。思考はいつも詩情の枯れた言葉の残骸を整理するだけだ。 

古代ギリシアで、哲学者のはびこる以前には、詩人が跋扈していた。詩人の言葉は真だった。後世の哲学史家が見つけたロゴスは、詩情の変形だ。哲学者が偉かったのは、詩情を酒と女に求める悪癖を断とうとしたことだ。その昔、酒神を崇める祭りは乱痴気騒ぎだった。 

詩情なき思考よ。乾いた紙面にどす黒いインクを刻み込んで、透明の世界に自画像を描きこむ。デジタルのドットに全事象を変換して、全てを包んで知りえた気になる。現実に触れたくて現実をうっちゃることの愚かさ。詩情をみなぎらせ、節制を重んじる、その姿に、理性以上の全き理想を、現実に見ようとするのは、儚き望みか。 

問いを置き忘れ、答えを漁る亡者の群れ。詩情を忘れ、哲学を捨てた先に、断ち切られた思考が何を掴むことができるか。路傍の電灯の点滅に出会ったら、猫が通るだろうと決めつける愚かな。人間の想像力は、独創に頼ったら衰える。しかしながら、問いを満たし、世界を呼び出すには、その時を待つより他ないのか。

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