課題の教科書

Critical Realism for All Leader

クリティカル・リアリズムの目指すもの|危機意識の醸成|言葉の再生に賭すもの

クリティカル・リアリズム(批評としての現実主義)の「クリティカル」には、「危機の」あるいは「決定的に重要な」という意味を込めている。既成の概念のありふれた意味理解に安住する人々の、足元を揺るがすのが、批評家の一つの役割だと思う。しかし、そんなことをして何の意味があるのか。

 言葉の意味は、人間の生活、生存をかけた競争に息づいた生々しい実感である。観念と成り果てた言葉は、人間の生活に現実感を与えない、死んだ言葉である。この世の片隅には、数多の観念的な言葉が死蔵されている。死んだ言葉で営む生活は、緊張感を失い、いずれ死に絶える。 

批評家の役割は、まず現実で何が起きていて、読者が、どこにいるかを明確化することである。批評によって読者は現状維持が最も危険だと認識する。現実主義は現状との妥協ではない。現実を理想の最たるものとして表現するのが、クリティカル・リアリズムである。 

危機に直面した人間は、無い物ねだりで乗り切ろうとする。理想を唱えても、誰も助けてはくれない。諸現実の中に転がっている、使い古した言葉、これらの真の意味を照らし出し、言葉を武器として使いこなすのは自分の才覚次第だと思い悟らねばならない。理想は現実から遠いのではない。現実世界の中に可能性がたくさん埋蔵されている。理想は思いの中にあって、言葉にならないものだ。理想は現実の中で発酵し、言葉となって無尽蔵に匂い立つ。言葉が人間に化体し、鼓動となって脈打つ。理想を我が手にしたいなら、身体の脈動を聞けばよい。理想を渇望するのは、現実に不足するからではない。あり余る現実に無知だからだ。 

知恵の源泉は、現実の見方を変えることである。それは同じ本質を絶えず表現し直す批評精神の真髄である。答えは、諸現実の隙間に収めた言葉である。言葉の裏表をポジティブな発想の転換に活かすのが、批評の錬金術だ。どの諸現実の間に言葉を置くかで、言葉の色味は全く違う。言葉の彩りが輝き出したら、眩しい目をして理想を見下ろすことができる。 

生活は沈滞し、時代は沈黙する。敵は城壁の外に広がる原野のどこにもいない。寝静まった生活とそれを看過し続ける時代が、真の敵だ。批評家は、鐘を叩き、内なる危機の到来を告げなければならない。死に体となった言葉の再生に、人間の再生を賭すのが、クリティカル・リアリズムを実践する批評家の立ち方だと思う。

スポンサーリンク