課題の教科書

Critical Realism for All Leader

クイズ|リアリズムの実力判定に求められる批評家の態度

ある動物です。

 

それは、鼻が鼻水で汚れている。耳がただれていることがよくある。牙を剥く。態度がデカイ。

 

さあ、何の動物でしょう。

 

いまいち、わからない?

 

では、同じ動物について、別の説明です。

 

それは、お鼻が長い。お耳が大きい。小さなお口の側から立派な牙がきれいに二本も出ています。そして、体が大きくて我慢強く、仲間思いです。

 

わかりましたか?そうです、象です。

 

最初の説明では想像しづらいですね。しかし、次の説明は、わかりやすい。この違いは何でしょうか。最初の説明はネガティブな評価です。次の説明は、象の美点を見出している。

 

批評家の課題を考える時の、留意点がここにあります。批評家は、ただ何かを非難しても、その実像をリアルに伝えることは難しい。批評は、対象の美点を浮き彫りにするから、対象の真の姿を浮かび上がらせて、読者の目にはっきりと見えるようにできる。

 

リアリズムの実力判定をするには、まず批評家が、批評対象のリアルな実像を克明にしなければならない。そのためには、あくまでポジティブに批評対象の美点を浮き彫りにする。

 

批評家が、リアリズムの実力判定に取り組む上で、備える必要があるのは、このポジティブな批評態度です。世の中は競争社会です。敵を討ち取ったり、逆に手負いになったりすることは、よくあることでしょう。しかし、批評家が、その競争の当事者でいてはいけない。各陣営のせめぎ合う戦場の中に分け入って、鬨の声をあげてはいけない。批評家は、あくまで、競技場の外にいて、名解説者であらねばならない。それが、言論の役割ではないでしょうか。

 

批評家の美点は、まさにその中立公正な知性の淀みない発露です。そういう批評家には、きっと強みがある。それでおのずと、発言力を身につけるようになる。

 

ただし、批評家も、評価はするでしょう。批評家が評価してはいけないわけではない。しかし、まず批評対象の美質を明らかにせずに、評価できますか?実像を世に知らしめることができますか?

 

リアリズムとは、好き嫌い以前に、現実を目の当たりにすることです。先に評価を入れない。先入見で見ない。

 

しかし、現実的には、しがらみのない人間は一人もいません。批評家もそうでしょう。それが人間のリアルな実像です。批評家は、二重の現実と向き合う人です。批評家は、自分の現実と批評対象の現実との相性まで計算に入れて、批評対象の写像にブレが生じないように、計算づくのアングルで、対象を写し出さねばならない。

 

批評のリアリズムは、単に批評対象のリアルな実像を描くだけではすまない。批評の真のリアリズムにおいて、批評家は、現実世界を等質に置き並べた上で、自分自身をその現実世界のどこに置いてから語り始めるのか、という問題に向き合わねばならない。自分の身の置き所がわかった時、不偏不党という、片意地張った標語に、自分を律してもらう必要はないだろう。そして、批評家は、心中でこう叫ぶ。私は真に自由だ!

 

これは批評家の完成型だろう。腑に落ちない状況で、これをいきなり目指すと、ややこしいことになる。まずは批評対象の美点を浮き彫りにすることから、始めよう。

 

象さん〜♬。

スポンサーリンク