課題の教科書

Critical Realism for All Leader

ソロンの改革|古代ギリシアの民主政治|盟主アテナイ衰退の示唆するもの

ソロンの改革。ソロンは、いずれ古代ギリシアの盟主となるべきアテナイにおける、大改革の功労者である。ソロンは、債務に苦しむ民をその足かせから解放し、国の発展の原動力、つまり人材を活用する道を開いた。また、ソロンは僭主を嫌い、その統治手法は、立法によるものであった。

改革がひとまず区切りを迎えた時、ソロンは十年戻らないと宣言して海外に旅立った。実質的な法の創案者であるソロンに、実際上の政治的な問題解決の上手い手を聞きたがる、アテナイの市民たちを、旅によってみずから遠ざけたのであろう。自らは僭主とならないというポリシーだけではなく、人材育成にかける並々ならぬ意志が、その判断には働いていただろう。 

その後、いくつもの困難な戦役を経ながら、幾人もの優れた指導者がつないだリレーは、記念すべき完走を果たし、アテナイデロス同盟の盟主として、名実ともにギリシア随一の繁栄を築いた。しかし、程なくデロス同盟は衰退し、アテナイの栄華は終わる。 

その原因を、当時のアテナイの自己中心的政策に求めるのは、ひとまずよい。確かに、それはきっかけにはなった。しかし、もっと大事なことは、その失政は、政策の失敗であるというより、人間の愚かさの象徴というべきもの、ということだ。アテナイの群衆心理は、優れた人材の台頭を抑えつけ、それらを追放し、あるいは無視した。歴史を紐解けば、衰退を避けるチャンスはいくらでもあったはずだ。しかし、それが避けられない結果になったのは、たった一つの出来事が宿命的に人格の動きを束縛してしまう、人間存在というものの危うさである。 

アテナイにウィークポイントなら、いくらでもあっただろう。それは繁栄に向かう途上にもあったし、繁栄を迎えた頂点にも、あったに違いない。そのありのままの姿を常に認識できるわけではないのは、人間という存在に付き物の、あまりに不合理で神出鬼没な魔力が、問題の本質をいつも人間に気づかせないからであろう。人間が、現実として実に頼りない者に見えた時、途端に問題が問題としての輪郭を帯び始める。 

人間の資質、努力、そして英知が、国の繁栄を導く。このことをソロンは、きっと熟知していただろう。しかし、その同じ人間が、時に破滅的な魔力を振り回すという、冷厳な事実を、ソロンはどう見ていたであろうか。僭主が出なければ大丈夫、そうたかをくくっていたのだろうか。しかし、繁栄へのリレーをつないだ優れた指導者たちは、多かれ少なかれ僭主的な資質をもち、縦横に自分の政治的影響力を駆使していた。 

もしソロンが、後世の優れた指導者達が台頭する時点に居合わせたら、僭主とみなし、それを阻止しようとしたかもしれない。そうしていれば、繁栄は来なかったかもしれない。しかし、わたしが言いたいのはそういう、歴史上無い事実が示唆する教訓ではない。表明したいのは、答えはどこにも、歴史にも無いだろうという諦観である。 

そのことを自分が自分の胸に刻む、というささやかな努力をするほかない。旅に出たソロンが、固く結んだ決意は、その時、はかりしれない重みとなって、頭上からのしかかる。

<編集後記>

その後、ソロンの改革について、かなり詳しく調べました。

その際、浮かび上がって来た論点はこの記事で詳しく解説しました。

ソロンの改革が取組んだ課題の重要論点、農民「ヘクテモロイ」を詳説 - 課題の教科書

その上で、ソロンが取り組んだ課題の本質を、現代的な視点で浮かび上がらせたのがこの記事です。

ソロンの改革で課題解決の成否はプロジェクト・オーナーが鍵だった - 課題の教科書

ソロンの改革をここまでまとめたサイトは、あまりないと思います。

詳しく知りたい人は参考にしてください。

ポエタ独自の視点が含まれているので、取り扱いにはご留意ください。

 

2018年9月6日改

2018年11月13日改

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